雪が落ちやすい横葺き(よこぶき)屋根と雪が落ちにくい立平葺き(たてひら)屋根の違い。敷き方で見た目も雪の落ち方にも影響あるトタンの仕上げ。雪国の家づくりより♪

2022-03-07家と雪国の冬の暮らし,建築屋的な話

冬季間の約4か月、雪が降り積もる地域での家づくりでは、

屋根から雪が落ちる。落ちにくい。落ちないは重要な事です。

雪が降る地域の住宅の屋根仕上げは圧倒的に

トタン(ガルバリウム鋼板)仕上げが多いです。

その屋根形状で、雪が落ちる落ちないは決まります。

初回打ち合わせ時にお客様から

「縦の方が、雪落ちやすいんですよね?」

なんて質問。

屋根の雪が落ちやすいと勘違いする立平葺き屋根とは

お客様からたまに聞かれる。

立平葺き屋根の方が雪が落ちやすいと、見た目での思い込みです。

屋根が軒先に向かいトタンの合わせ目が縦にむいてる形状。

これが立平葺き屋根の仕上げです。

(写真は瓦棒葺きという仕上げ、トタンの合わせ目に木を使用。

 立平葺きはこの部分がもっとシンプルに仕上がります)

この縦のラインが、雪を落ちやすくしてくれると思う人が多い。

横葺き屋根という仕上げ方法

立平葺き屋根に対し

軒先と平行にトタンの合わせ目があるのが横葺き屋根仕上げ。

仕上げ方は数種類ありますが、

大きく分けると、この2種類。

この横葺き屋根仕上げが数としては多い印象かな。

(横葺き屋根はゆるい勾配には施工できないです…フラット仕上げ等)

どちらの仕上げが雪が落ちやすいのか?

この2種類で比較すると

立平葺き屋根よりも横葺き屋根の方が、雪が落ちやすい。

(屋根勾配等は同条件として)

これが答えです。

もう少し深掘りしましょう。

立平葺き屋根と横葺き屋根の違いは何か?

立平葺き屋根より横葺き屋根の方が雪が落ちる理由。

屋根面積や勾配等が同じ条件だったとして

その違いは…

屋根全体が平面で仕上がっているか?否か?

立平葺きはトタンのあわせ目が立ち上がっている為、その部位を雪が掴むかたちとなり結果として雪が落ちにくい状態になっています。

それに対して横葺きは屋根全体が平面な状態で、雪が滑り落ちるという動きに何も障害がないから落ちやすい。

瓦棒葺き屋根なら雪が掴む箇所も多い為、さらに雪は落ちにくいでしょう…

最近新築では見なくなりました。

無くなっていく仕上げや施工は、何かしらの問題がある為です。

施工単価やトタンの合わせ部が多くなる等。

水道配管にも言えますが、ジョイント部が多くなるのは水漏れなどの原因。屋根の場合はそこから瓦棒の木材に水がしみ込むとか問題もありえます。

だから近年は減少傾向と思われます。

屋根の雪が落ちやすい屋根形状以外の原因

断熱性能の低い住宅は、屋根の雪が落ちやすくなります。

住宅は天井部もしくは屋根部に断熱材が施工されています。

断熱性能が低いと、家の中を温めながらも屋根部から外部へ熱が逃げます。

室内から温められた屋根は雪を溶かし落ちやすくします。

軒先に大きなツララが出来やすい家は、室内から暖かい空気が屋根へ逃げている可能性があります。断熱性能の良い家は小さいツララが出来ます。

(雪止めが施工されている等、他の要因がある場合もあり)

雪を落とせない状況なら雪止めの施工も必要

見た目的に横葺き屋根の施工が多いです。(個人的見解)

雪を落とせない場合は、雪止めの施工が必要になります。

私の住む場所は雪止め施工が多い地域です。

アングルと呼ばれる、L型鉄骨を設置しているのも見かけます。

ただ、例年以上の雪が降るとちょっと怖い施工です。

理由は大量の雪を支えきれず、鉄骨のアングルがトタン屋根ごとめくれて落ちる事例もある為。雪が多い地域では、大量の雪止めを施工した方が雪の加重を分散させることが出来安心です。

また、屋根の雪が層でずれて表面の一部分のみすべり落ちる現象もまれにあります。屋根上約40cm積もった上部20cmだけすべり落ちるという現象です。

日中に気温が上がり雪の表面が溶けその上にまた雪が積もる…結果、氷の面を境にずれて上部だ落ちるという状態です。長年雪国の建築屋してますが実際に見たのは1度のみです。なかなかレアな自然現象です。

雪が落ちない屋根、落ちにくい屋根

雪国特有の施工方法に無落雪屋根というのもあります。

屋根を平らにしたり、屋根内に側溝を設け解けた水を排水する屋根形状で冬季間の雪を積みっぱなしにする考え方です。雪の降り積もる量によっては雪下ろしが必要な場合もあります。

アスファルトシングルという表面がざらざらした素材の仕上げ方法もあります。

見た目も素敵でここ数年東北でも見かける機会も増えました。

横葺き屋根に突起がついたスノーストップルーフなる仕上げ方法もあります。

見た目も良く、雪が落ちない。というのがウリでしょう。

あまり雨どいの施工が習慣化されてない雪の降る地域では見かけるのは少ないです。凍結によるスガモレとか心配な要因もあり。

まとめ

雪国で新築住宅を施工する際、覚えておくべき屋根の事を

立平葺き屋根の方が雪は落ちにくいからまとめました。

季節にもよりますが、数年に何度かは質問される屋根のことです。

過去の事例で平屋に横葺き屋根を切り妻で仕上げた物件がありました。

(切り妻・・・いわゆる三角屋根)

横葺き屋根は棟の部分(一番高い部分)の雪が割れると、一気に全て落ちることが多いです。屋根面積が大きく雪が厚くなっていると落ちた雪は、人力では片付けられない量になります。その時は2m程の雪山になりました💦

地域の雪の特色など、特異な場合もあるかもしれません。

雪国の建築屋は、雪国の家づくりのプロです。

疑問点等は確認しておいた方がよいでしょう着工前に。

4か月間はながいです😆

最後に

数十年に一度の大雨や自然災害が頻繁に起こります。

『例年の降雪量なら大丈夫』という考えはもう通用しないかもしれません。

大雪も毎シーズン、ニュースで見ます。

・・・気にするときりがないですけど。

雪国で新築工事を計画するなら

冬の4か月間のことは大事です。

おわり